労働安全衛生におけるさまざまなキャンペーンや運動について解説
労働災害をゼロにするために、さまざまなキャンペーンや運動が展開されています。
今回は、労働安全衛生におけるさまざまなキャンペーンや運動についてご紹介いたします。
全国安全週間
全国安全週間とは、「労働災害防止活動の推進を図り、安全に対する意識と職場の安全活動のより一層の向上に取り組む週間」です。
昭和3年から継続して取り組みが実施されており、毎年7月1日~7日が実施期間です。
各事業場においては、以下の事項を実施することが実施要領に示されています。
(1)全国安全週間及び準備期間中に実施する事項
①安全大会等での経営トップによる安全への所信表明を通じた関係者の意思の統一及び安全意識の高揚
②安全パトロールによる職場の総点検の実施
③安全旗の掲揚、標語の掲示、講演会等の開催、安全関係資料の配布等の他、ホームページ等を通じた自社の安全活動等の社会への発信
④労働者の家族への職場の安全に関する文書の送付、職場見学等の実施による家族の協力の呼びかけ
⑤緊急時の措置に係る必要な訓練の実施
⑥「安全の日」の設定のほか全国安全週間及び準備期間にふさわしい行事の実施
(2)継続的に実施する事項
①安全衛生活動の推進
ア 安全衛生管理体制の確立
イ 安全衛生教育計画の樹立と効果的な安全衛生教育の実施等
ウ 自主的な安全衛生活動の促進
エ リスクアセスメントの実施
オ その他の取組
②業種の特性に応じた労働災害防止対策
ア 小売業、社会福祉施設、飲食店等の第三次産業における労働災害防止対策
イ 陸上貨物運送事業における労働災害防止対策
ウ 建設業における労働災害防止対策
エ 製造業における労働災害防止対策
オ 林業の労働災害防止対策
③業種横断的な労働災害防止対策
ア 高年齢労働者、外国人労働者等に対する労働災害防止対策
イ 転倒災害防止対策(STOP!転倒災害プロジェクト)
ウ 交通労働災害防止対策
エ 熱中症予防対策(STOP!熱中症 クールワークキャンペーン)
全国労働衛生週間
全国労働衛生週間とは、「働く人の健康の確保・増進を図り、快適に働くことができる職場づくりに取り組む週間」です。
昭和25年から継続して取り組みが実施されており、毎年10月1日~7日までが実施期間です。
各事業場においては、以下の事項を実施することが実施要領に示されています。
(1) 全国労働衛生週間中に実施する事項
ア 事業者又は総括安全衛生管理者による職場巡視
イ 労働衛生旗の掲揚及びスローガン等の掲示
ウ 労働衛生に関する優良職場、功績者等の表彰
エ 有害物の漏えい事故、酸素欠乏症等による事故等緊急時の災害を想定した実地訓練等の実施
オ 労働衛生に関する講習会・見学会等の開催、作文・写真・標語等の掲示、その他労働衛生の意識高揚のための行事等の実施
(2) 準備期間中に実施する事項
下記の事項について、日常の労働衛生活動の総点検を行う。
ア 重点事項
(ア) 過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進
(イ) 労働者の心の健康の保持増進のための指針等に基づくメンタルヘルス対策の推進
(ウ) 労働災害の予防的観点からの高年齢労働者に対する健康づくりの推進
(エ)化学物質による健康障害防止対策に関する事項
(オ) 石綿による健康障害防止対策に関する事項
(カ) 受動喫煙対策に関する事項
(キ) 治療と仕事の両立支援対策の推進に関する事項
(ク) その他の重点事項
イ 労働衛生3管理の推進等
(ア) 労働衛生管理体制の確立とリスクアセスメントを含む労働安全衛生マネジメントシステムの確立をはじめとした労働衛生管理活動の活性化
(イ) 作業環境管理の推進
(ウ) 作業管理の推進
(エ) 健康管理の推進
(オ) 労働衛生教育の推進
(カ) 心とからだの健康づくりの継続的かつ計画的な実施
(キ) 快適職場指針に基づく快適な職場環境の形成の推進
(ク) 職場における感染症(新型コロナウイルス感染症、ウイルス性肝炎、HIV、風しん等)に関する理解と取組の促進
ウ 作業の特性に応じた事項
(ア) 粉じん障害防止対策の徹底
(イ) 電離放射線障害防止対策の徹底
(ウ) 騒音障害防止のためのガイドラインに基づく騒音障害防止対策の徹底
(エ) 振動障害総合対策要綱に基づく振動障害防止対策の徹底
(オ) 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインによる情報機器作業における労働衛生管理対策の推進
(カ) 酸素欠乏症等の防止対策の推進
(キ) 建設業、食料品製造業等における一酸化炭素中毒防止のための換気等
エ 東日本大震災等に関連する労働衛生対策の推進
(ア) 東電福島第一原発における作業や除染作業等に従事する労働者の放射線障害防止対策の徹底
(イ) 「原子力施設における放射線業務及び緊急作業に係る安全衛生管理対策の強化について(平成24年8月10日付け基発0810第1号)」に基づく東電福第一原発における事故の教訓を踏まえた対応の徹底
STOP!熱中症クールワークキャンペーン
STOP!熱中症クールワークキャンペーンとは、「職場における熱中症予防対策の浸透を図るとともに、重篤な災害を防ぐために、事業場における WBGT 値の把握や緊急時の連絡体制の整備等を特に重点的に実施し、重篤な熱中症災害を防止するキャンペーン」です。
平成29年から継続して取り組みが実施されており、毎年5月1日~9月30日までが実施期間です。
本キャンペーンにおいては、すべての職場において基本的な熱中症予防対策を講ずるよう広く呼びかけるとともに、熱中症の初期症状を早期に把握し、重篤化や死亡に至ることがないよう、期間中、事業者がWBGT値を把握してそれに応じた適切な対策を講じ、緊急時の対応体制の整備を図るなど、重点的な対策の徹底を図ることを目的としています。
各事業場においては、以下の事項を実施することが実施要領に示されています。
(1)準備期間中に実施すべき事項
ア WBGT値の把握の準備
イ 作業計画の策定等
ウ 設備対策の検討
エ 休憩場所の確保の検討
オ 服装等の検討
カ 教育研修の実施
キ 労働衛生管理体制の確立
ク 緊急時の措置
(2)キャンペーン期間中に実施すべき事項
ア WBGT値の把握
イ WBGT値の評価
ウ 作業環境管理
エ 作業管理
オ 健康管理
カ 労働衛生教育
キ 異常時の措置
ク 熱中症予防管理者等の業務
(3)重点取組期間中に実施すべき事項
ア 作業環境管理
イ 作業管理
ウ 健康管理
エ 労働衛生教育
オ 異常時の措置
年末年始無災害運動
年末年始無災害運動とは、「働く人たちが年末年始を無事故で過ごし、明るい新年を迎えることができるようにという趣旨の運動」です。
昭和46年から継続して取り組みが実施されており、毎年12月1日~1月15日までが実施期間です。
年の締めくくりを笑顔で送り、災害のない明るい新年を迎えるために、「安全最優先」の考え方を基本に、あわただしい時期にこそ、作業前点検の実施、安全な作業方法の確認などを着実に実施することが求められます。
各事業場においては、以下の事項を実施することが実施要領に示されています。
(1) 経営トップによる安全衛生方針の決意表明
(2) リスクアセスメントおよび労働安全衛生マネジメントシステムの導入・定着
(3) KY(危険予知)活動を活用した非定常作業における労働災害防止対策の徹底
(4) 機械設備に係る一斉検査および作業前点検の実施
(5) 安全保護具・労働衛生保護具、安全標識・表示等の点検と整備・更新
(6) 転倒、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ災害防止や腰痛予防対策の徹底
(7) 火気の点検、確認など火気管理の徹底
(8) 交通労働災害防止対策の推進
(9) 安全衛生パトロールの実施
(10) 化学物質のリスクアセスメントの実施を含めた化学物質管理の徹底
(11) 年末時期の大掃除等を契機とした5Sの徹底
(12) 年始時期の作業再開時の安全確認の徹底
(13) 過重労働をしない・させない職場環境づくり
(14) 高年齢労働者を含めた身体機能の維持向上のための健康づくり、健康的な生活習慣(睡眠、食生活、運動等)に関する健康指導などの実施
(15) 新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ等の感染症対策の徹底
(16) 職場のハラスメント防止につながる取り組みの推進
(17) 自然災害等に伴う復旧・復興工事等における労働災害防止対策の推進
(18) 安全衛生旗の掲揚および年末年始無災害運動用ポスター、のぼり等の掲示
(19) その他安全衛生意識高揚のための活動の実施
安全衛生教育促進運動
安全衛生教育促進運動とは、「労働災害防止のために不可欠な安全衛生教育、とりわけ労働安全衛生法に基づく教育等を促進する運動」です。
昭和25年から継続して取り組みが実施されており、毎年12月1日~4月30日が実施期間です。
各事業場においては、以下の事項を実施することが実施要領に示されています。
(1) 年間の安全衛生教育実施計画の作成、これに基づく安全衛生教育の計画的かつ効果的な実施
(2) 安全衛生教育の実施結果の記録・保存
(3) 実施計画の作成、実施、実施結果の記録・保存など安全衛生教育に関する業務の実施責任者の選任
(4) 法定教育等の徹底
(5) 法定教育以外の教育等の充実
(6) オンラインを活用した安全衛生教育の適切な活用と推進
(7) 資格または特別教育等が必要な設備機器、作業場所等に対して、その必要な資格または特別教育の種類を掲示することや、有資格者に腕章を装着させることなど、安全衛生教育に関する「見える化」の推進
(8) 講師、教材等の問題から、自ら安全衛生教育を実施することが困難な場合の、安全衛生関係団体等の活用による安全衛生教育の実施
労働安全衛生におけるさまざまなキャンペーンや運動にはさまざまなものがありますが、ゼロ災害へ向けて事業において様々なキャンペーンや運動を展開していきましょう。