ハインリッヒの法則を改めて深く理解する
2020/06/11
労働災害における経験則にハインリッヒの法則があります。
ハインリッヒの法則は「1:29:30の法則」ともいわれ、安全衛生に携わっている方であれば誰もが聞いたことはあるかと思います。
しかし、意外にも深く理解している方は少なくはありません。
今回は、「ハインリッヒの法則を改めて深く理解する」についてご紹介していきましょう。
ハインリッヒの法則とは
まずは、ハインリッヒの法則からおさえていきましょう。
ハインリッヒの法則とは、アメリカの損害保険会社(トラベラーズ保険会社)の安全技師であったハーバート・W・ハインリッヒ(Herbert William Heinrich)が1929年に発表した法則です。
ハインリッヒは、ある工場で起こった5,000件以上の労働災害を調査し、その発生確率を分析し、「1件の重傷災害が発生している現場では、その背景に29件の軽微な事故があり、幸い障害になっていないものが300件起きている」という「1:29:300の法則」を報告しています(詳細については、「Industrial Accident Prevention:A Scientific Approach」を参照)。
日頃の現場では、ヒヤリとしたりハッとしたりすることが多く発生していますが、このヒヤリとしたりハッとしたりするヒヤリハットは潜在的な不安全行動と不安全状態によるものが原因です。
ハインリッヒは、この潜在的な不安全行動と不安全状態が無数に存在していると指摘しています。
バードの法則
ハインリッヒの法則に似たものとして、バードの法則があり、ハインリッヒの法則が発表された40年後にバードの法則が発表されました。
バードの法則とは、フランク・バード(Frank E.Bird Jr.)が発表した法則です。
バードの分析では、21業種、297社の1,753,498件にのぼる事故報告を分析し、「重傷または廃疾を伴う災害の起こる割合が1に対して、軽い傷害を伴う災害の起こる割合が10、物損のみの事故が30、傷害も損害もない事故(ヒヤリ・ハット事故)の割合が600になる」という「1:10:30:600」と発表しています。
ハインリッヒのドミノ理論
ハインリッヒはハインリッヒの法則以外に有名なドミノ理論 があります。
ドミノ理論は、労働災害はさまざまな要因の連鎖の結果生じるとするもので、発生系列および時系列順に5つの要因を想定しています。
5つの要因は、①環境的欠陥、②管理的欠陥、③不安全状態・不安全行動、④事故、⑤災害です。
ハインリッヒは、この連鎖するドミノのうち1つを除去すれば連鎖を食い止めることができると考え、5つのドミノの中で除去すべき1つを不安全行動・不安全状態であると主張しました。
災害をなくすには事故をなくすこと、事故をなくすには不安全行動・不安全状態をなくすことが大切であるということがドミノ理論です。
ハインリッヒの安全基本理念10項目
ハインリッヒは、安全基本理念10項目を挙げています。
・災害・事故はあることから連鎖反応によって反応する
・大多数の災害・事故は不安全行動に起因している
・1件の災害・事故が起こる職場では、300回以上の不安全行動がおこなわれている
・重症・軽症の障害の程度は主として偶然の結果である
・不安全行動は、工学・人事・教育・訓練・指導の繰り返しによって避けられる
・災害防止の技術は、品質・原価・生産性向上の技術と共通している
・経営舎は災害防止の最高責任者である
・監督者は災害防止のキーマンである
・安全な設備は生産に対しても能率的である
・災害点事故による経営者の損失は、障害による治療費、補償に要する金額の5倍以上になる
ハインリッヒは、無傷事故を含むすべての事故の88%が不安全行動により起こり、10%が機械的物理的不安全状態によるとし、これらを修正することで労働災害全体の98%は防止することができる」と提唱しています。
不安全行動・不安全状態をいかに根本的になくしていくかということが大切です。